王ラン4巻描き下ろしへの感情

描き下ろし…描き下ろし…ウッウッウッウッ……(泣いてる)

とりあえず描き下ろしについて語ります。
私は根本として、ドーマスという人間は肉体的には強いが、精神的に弱く、尚且つ人の気持ちを深く慮ることができず、強い信念を持つことができず、頭脳派に見えて割と浅慮なところがある人間だと考えていました。

今回の描き下ろしではドーマスとボッジくんの過去の話、剣術指南役としてドーマスがボッジに教え始めた時の話が描かれていました。1巻でもありましたが、指南役に抜擢されたドーマスは意気揚々としており、描き下ろしでも「自分の剣」の全てを教えようとして指南役としての役目を果たそうとしている姿が描かれています。
そして、「自己の保身(ボッジへのもどかしさ)」と「弟子であるボッジへの愛情、憐憫」の気持ちで苦しみ自棄酒をあおるシーンがあります。これが1巻のドーマスに続く、ドーマスの人間としての弱さ、同時に私は愛おしく感じる部分であるとも思います。
このような場合に、「か弱い弟子は悪くない、私が悪い」と割り切り全ての責任を自分に負わせるような人間は、なかなかいないと思います。人間としての弱さに抗おう、道理の通った善人であろうとする姿こそ、ドーマスがドーマスたる所以で、そこが魅力であると考えます。
「これでは幻滅されてしまう」と焦るのは当たり前のことで、その焦りをボッジに向けてしまうのも当然のことなのです。でも弟子であり、無垢に頑張ろうとしているボッジを憎むのは余りに非道である。それだけの事を考える感覚はドーマスにだって当然あります。「じゃあ自分はボッジの事をどのように考えれば良いのか?どう考えれば苦しくなくなるか?ボッジを憎まずに済むのか?」
この答えが自分が強くなってボッジを守ること、だったのでしょう。ボッジ自身の意思を無視した考えで、それはある種の諦めとも言えますが。
つまり、ドーマスはボッジを「弟子」として見ることを止めているのです。保護するべき対象「護衛対象」と捉えているのです。

ここの理論は、私にはドーマスが甘えているようにも思えてしまうのです。憎まない為にした選択、そう思えばドーマスにも同情の余地は大いにあり、当時の彼にとっては最善の策だったのでしょう。
しかし、彼がまだ考慮していない箇所は残っているのです。
①ボッジは身体能力が低い
②だから力の剣を教えることは出来ない
③ならば自分が護衛すれば良い

②から③はやや思考放棄している傾向があります。力の剣でなくとも、作中で描かれているようにボッジの俊敏性等をいかした戦い方だってあったのではないでしょうか。
ドーマスは、剣術指南役とは「自分の技術」を弟子に継承するもの、という固定観念に囚われていたのではという疑問が湧きます。
ボッス王国では、国王のボッスが守りを捨て攻撃に特化した戦い方をとっているため、そのように戦うことのできるダイダが優秀であると捉えられています。
この前提がある事で、ドーマスは尚のこと視野が狭くなっていたのではないでしょうか。マンガハックのキャラ紹介でもドーマスは「頭が固い」と書かれており、王国全体の考え方を良しとしていたのかもしれません。もしドーマスに、ボッジの俊敏性などの力を生かし強くすることができたとしても、王国に流れる「強さ」への考え方がボッジを王とは認めないでしょう。そこでドーマスがその強さへの固定観念こそが間違っている、多様なスタイルを認めるべきであると主張出来れば、ボッジの指南役として務めたと言えます。

一巻でドーマスはボッスの力強さに憧れて王国に勤め始めたと描かれています。これは、ドーマス自身が「強さとは力である」という考えを持っているということです。
つまり、先述したボッジの指南役として望ましい行動をドーマスは取れないのです。じゃあ私が今まで打った文は何だったんだって話ですが、何だったんだろう…?私は何を必死に……

ドーマスが指南役として働くことを諦めたことは一旦良いとして、
では「何がドーマスをボッジを突き落としてまで保身を測ろうとさせたのか?」
という疑問が湧きます。

これは私の個人的な考えになりますが、停滞していた時間が長かったせいではないでしょうか。この描き下ろしと1巻冒頭までにどれだけの時間が経っているかは分かりませんが、ここまでボッジを愛そうとしたドーマスを追い詰めるには、かなりの苦痛が必要であったと思われます。
ドーマス自身はボッジを憎まない為に護衛対象と捉えるようにしたが、周囲からは依然ドーマスはボッジの剣術指南役であるという認識で、そこにズレが生じています。
このズレがドーマスを苦しめたのです。1巻ではドーマスはボッス王から「王子をさらに鍛え上げてくれ」と言われています。
そこで更に彼を追い詰めたのはダイダとベビンの存在でしょう。国に流れる「強さとは力である」の考えをそのまま汲んだ優秀なダイダは、正に弟子として望ましい子です。そして1巻でも描かれているように、ドーマスはダイダと実際に手合わせしました。これが決定的なトリガーだったのでしょう。2人の王子には余りに実力に差があったのです。
(ボッジ様を憎まないようにしよう、自分は守る為に自分だけ強くあれば良い)というドーマスの考えは周囲の声により壊されました。そして3巻28話のダイダからの甘言…ここでドーマスは自己の弱さに負けたのです。

描き下ろしの最後のページ、67話時点のホクロくんを鍛錬しているドーマスの様子です。
私は76話のホクロくんに自分の意図を伝えた際に、ドーマスの成長した面が描かれていると考えました。
前述したように、ボッジくんに対してドーマスは諦めてしまっていました。しかしホクロくんに対しては、ドーマスはホクロくんに対して、今できる最善の策を取っています。それが、技術は教える時間がないから、筋力を付けさせてボウガンによる援護射撃をしてもらう事です。ホクロくんとの出会いで、初心を思い出したドーマスの成長が描かれています。
そして、最後のページにあるドーマスからホクロくんへの「ホクロありがとな」の言葉。54話で感謝している、とは言いましたが、直接的に伝えたのは初めてです。やはりドーマスを動かしたのはホクロくん…ドーマスとは真逆で、力こそないが信念は通ったホクロくんなんだな…という事を改めて感じました。
あとこれ全然関係ないけどホクロくん岩持てるようになってて偉い。67話では丸太持ててなかったもんね。偉すぎる。そしてかわいい。天才。

とりあえず描き下ろしに対しての感想?感情?は以上です!!こんな長文を読んでいただきありがとうございました。

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